訴 状(仮)


令和○年○月○日

●●地方裁判所 御中

【原告】

住所:○○県○○市○○町○番地
名称:○○バス株式会社

住所:○○県○○市○○町○番地
名称:○○交通株式会社

住所:○○県○○市○○町○番地
名称:○○バス株式会社

(以下「原告ら」という)

【被告】

名称:一般社団法人 日本のバスの情報協会
住所:東京都千代田○○○○○○
代表理事:○○ ○○


第1 請求の趣旨

  1. 被告は原告らに対し、連帯して金3,700万円を支払え。
  2. 被告は原告ら各社に対し、業務妨害による慰謝料としてそれぞれ金800万円を支払え。
  3. 被告は、原告らが提供したバス情報を用いた「勝手アプリ」による案内を直ちに中止させる措置を講じよ。
  4. 訴訟費用は被告の負担とする。
  5. 第1項及び第2項につき仮執行を宣言する。

第2 請求の原因

1. 当事者

(1) 原告らは、○○県内において一般旅客自動車運送事業(以下「バス事業」という)を営む○○バス株式会社ほか2社である。

(2) 被告は、日本国内のバス情報に関する普及・広報活動等を行う一般社団法人であり、バス事業者等に対してオープンデータ化の推進などを支援・助言している団体である。

2. 事案の概要

(1) 被告は、原告らに対し、公共交通データのオープンデータ化を積極的に推進するよう勧誘してきたが、その際にCC BY 4.0(Creative Commons Attribution 4.0 International License。以下「CC BY4.0」という)の潜在的リスクについて何ら説明を行わなかった。

(2) 原告らは、被告の勧めに応じてGTFS形式(General Transit Feed Specification。以下「GTFS」という)によるバス運行情報を作成し、CC BY4.0ライセンスの下で公開するに至った。

(3) しかし、CC BY4.0によってデータの自由な利用が広まった結果、原告らが管理・監修していない、いわゆる「勝手アプリ」と称されるバス時刻案内アプリが無数に作成・配布される事態が発生した。

3. 被告の違法行為(潜在リスクの隠蔽)

(1) 被告は、CC BY4.0には「自由に改変・再配布が可能になるため、データ利用者が誤った時刻やルートを掲載してもライセンス上制限しづらい」という大きなリスクがあることを認識していたにもかかわらず、このようなリスクを原告らに告知せず、むしろ「オープンデータ化すれば利用促進につながる」とのメリットのみを強調した。

(2) この被告の説明義務違反(リスク隠蔽)によって、原告らはデータをCC BY4.0で公開するという重要な意思決定を誤って行ったといえる。

4. 損害の発生

(1) 「勝手アプリ」による誤情報の拡散
・「勝手アプリ」には、ダイヤ改正の反映が不十分、路線廃止や時刻変更を遅延して更新するなどの不備が多く見られた。
・その結果、利用者が誤情報をもとにバス停に来訪したものの運行がなく、乗車できないなどのトラブルが多発した。

(2) 利用者・地域住民からの苦情電話の増加
・「勝手アプリ」の誤案内の影響により、原告らの問い合わせ窓口(電話や窓口対応)には、運行情報の問い合わせや苦情が大幅に増加した(別紙1)。
・苦情対応に追われ、電話が繋がりにくくなるなど通常の案内業務に支障が生じた。

(3) 具体的損害
・上記の混乱に伴い、バスを利用できなかった利用者がタクシーを利用するための費用を原告らが補填せざるを得ないケースも生じ、県内バス事業者3社合計で1年間に3,700万円の損害が発生した(別紙2参照)。
・また、本来の業務に支障が生じたことで、クレーム対応の人件費増加やオペレーション変更の費用など、追加的な負担を余儀なくされ、これによる損害も含めて同額3,700万円として算定している。

5. 被告の責任原因

(1) 説明義務違反・情報隠蔽
・被告は、CC BY4.0のライセンスを導入するにあたり、利用者がデータを改変して拡散する可能性や、それに伴うリスクを把握し得る立場にあった。にもかかわらず、原告らに対してそうしたリスクを明確に説明しなかった行為は、説明義務違反に当たる。
・この結果、原告らは被告の情報を全面的に信頼し、GTFSデータをCC BY4.0で公開するという重要な意思決定を行った。

(2) 因果関係
・原告らがCC BY4.0ライセンスによるオープンデータ化を行ったことにより、データの不正確な利用が加速し、実際に上記のとおり利用者・原告ら双方に甚大な被害が発生した。
・したがって、被告の行為(リスク隠蔽)と原告らの損害の間には因果関係が認められる。

(3) 損害賠償責任
・民法709条または民法415条(債務不履行)等の法的根拠により、被告は原告らに対し損害賠償責任を負う。

(4) 業務妨害に対する慰謝料
・原告らは、本来の業務遂行に大きな支障を来したことにより、経済的損失のみならず精神的苦痛・社会的信用失墜などの被害を受けている。
・よって、業務妨害による慰謝料として各社ごとに金100万円を請求する。

6. 被告に対する請求

(1) 原告らが被った損害の填補
・原告らは、被告の説明義務違反および隠蔽行為により被った損害として、合計700万円の支払いを被告に求める。

(2) 慰謝料の支払い
・原告ら各社に対し、業務妨害による慰謝料として各800万円の支払いを求める。

(3) 「勝手アプリ」への案内中止措置
・被告が主導、あるいは積極的に支援を行ってきたオープンデータ普及の一環として、原告らが公開したデータの誤用による被害が深刻化している。
・ついては、被告に対し、誤情報を提供している第三者アプリ事業者に対して速やかに利用停止・案内中止を求める等、状況改善に資する措置を講じることを請求する。


第3 証拠方法


上記のとおり訴えを提起する。

令和○年○月○日

原告 ○○バス株式会社 代表取締役 ○○ ○○
原告 ○○交通株式会社 代表取締役 ○○ ○○
原告 ○○バス株式会社 代表取締役 ○○ ○○

●●地方裁判所 御中